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ここまで「ラジウム泉」と書いてきたが、「温泉法」では、ラジウムやラドンを含む温泉を「放射能泉」として定義している。温泉であるからには、まず水温が二十五度以上あること。その上で、温泉一キログラム中に ①ラドンが七十四ベクレル(=五・五マッヘ)以上 または、 ②ラジウム塩が〇・〇〇〇〇〇〇〇八ミリグラム以上 含まれるもの。また、「療養泉」は温泉法の定義ではなく、温泉医学の経験から医療効果があるとされる基準で、同じく百十一ベクレル(八・二五マッヘ)以上のものをいう。 さらに昭和五十四年からは、新泉質名としてこの放射能泉がさらに細かく分類されたため、 ①単純放射能泉 ラドンが五十マッヘ以上 ②単純弱放射能泉 ラドンが八・二五マッヘ以上、五十マッヘ未満 と掲示される場合もある。 ちなみに「ベクレル」は放射能の発見者の名前からとったもので、一ベクレルは一秒間に原子核が一個崩壊する単位。キュリー夫人からとった単位「キュリー」、「マッヘ」、そしてこの「ベクレル」の関係は、「一ベクレルBq=〇・〇二七×十マイナス十乗キュリーCi=〇・〇七四マッヘ」となる。
ラジウムは一八九八年、そのキュリー夫人によって発見された固体元素で半減期(放射能が半分になる時間)は一六二二年。ラジウムが崩壊する時にできる気体の別元素がラドンで、半減期は三・八二五日に激減する。地下にあるラジウムから生まれたラドンは温泉水に溶けて地上に上がり、皮膚から吸収されたり、空気に放散して呼吸によって取り込まれる。そしてほとんどは呼吸によって百八十分後に体外に排出されるという。 ラドンの名称は一九二三年の国際会議で正式に採用されたが、それまではラジウムから生まれる気体元素、ということから「ラジウム・エマナチオン(揮発性物質)」、「ラジウムの娘」と呼ばれていた。
放射能泉の権威、大妻女子大の堀内公子教授による放射能泉の分類では、元素の含有率から「ラジウムタイプ」「ラドンタイプ」「トロンタイプ」としている。トロンは存在じたいがまれ。ラジウムもラドンに比べて水中に溶けにくく、量が少ない。また測定方法も複雑なため、測定例じたいが世界的にも多くないという。 実は「ラジウム温泉」「ラジウム泉」といわれているものの実態は、ほとんどが「ラドンタイプ」で、その点では「ラドン温泉」のほうが正しい、とさえ言えそうだ。 ここでやっかいな問題が現われる。 昔からある「人工ラドン温泉」とは、いったいなんなのか。 厳密に言えば、「温泉」は天然に地中から湧出した泉水だから、「人工のラドン温泉」は存在しないことになる。正しくは、「人工的にラドンガスを派生させて温水中に混ぜて入浴させる施設」といったところ。問題は、そこで見られるラドンと天然のラドンの違いはなんなのか、という点だ。
実は、ラドンにはいくつかの同位体(原子番号が同じで原子核の中性子が異なるもの)がある。最も半減期の長いラドン222はウラン系列に属し、ウラン238→ウラン234→トリウム→ラジウム→ラドン222へ変化。このラドン222を狭義にラドンとし、ラドン220をトロン、ラドン219をアクチノンと呼ぶ。ウラン、ラジウムを簡単に入手したり、管理したりできないのは当然だから、人工ラドン温泉の多くは「モナザイト鉱石」を使用しているらしい。ここから生じるラドンガスはラドン22〇、つまりトロンだ。 こうして、「ラジウム温泉」は、実際は「ラドン温泉」のほうが正解に近く、「人工ラドン温泉」は「人工トロン温浴施設」のほうが正解に近い、というややこしいことになる。 ラドン222とラドン22〇は半減期が異なり、結果として人体に与える効果も異なる。 北海道大学名誉教授・阿岸祐幸博士は、 「このラドンガス22〇の半減期は五十五秒で、十分間もすると最初の値の数百分の一になってしまいます。ラドンガスが吸入や皮膚を通じて体内に入り、血液に溶け込んで細胞までに達する時間は、約十分かかります。したがって、人工のラドン22〇は十分間でほとんど消失してしまうといえます。
いっぽう、天然の放射能泉に含まれるラドンガスは、ラドン222というもので、半減期は三・八一日(原文ママ)です。すなわち、体内に入ってから三・八一日かかって放射能が半分になるのです。(中略)このように、天然ラドンガスと人工的にモナザイト鉱石から発生させたラドンガスでは、性質や作用時間がまったく異なるものといえるでしょう」(みんかつ二〇〇六より) として、ではなぜ、人工のラドン温浴施設が効果的という人がいるのか、に言及している。 博士の実験では、こうした施設がラドンガスを逃がさないように窓を密閉して、サウナのような高湿度状態にしていることに着目。ラドンの影響というより、湿度の影響で発汗量、心拍数、血圧を高め、交感神経を刺激しているなどの結果を明らかにした。この研究結果から見ると、あくまで、サウナの延長として考えたほうがよいのかもしれない。 天然のラドン220、トロンについては一時、計測が進められた時期があったが、その後、ほとんど研究が進んでいないことからも、事情がうかがえる。
トロンとは異なり、「ラジウム泉」「ラドン」については、古くからその効能が実証され、メカニズムの解明も進んできた。もっとも有名なのは三朝温泉にある岡山大学病院三朝医療センターでの温泉療法の実践と研究。一九九二年、同大学の御船政明氏は、 「三朝温泉の住民のガン死亡率は、全国平均や周辺よりも低い」 と発表した。この報告では、三朝温泉の住民をラドン温泉地域と周辺農村地域に分け、一九五二年~一九八八年までの死亡原因を調査。ガンでの死亡率は全国平均を一とすると、温泉地域が男性〇・五四、女性〇・四六、周辺農村地域が男性〇・八五、女性〇・七七だった。 日本の放射線についての法令や基準値は「国際放射線防護委員会(ICPR)」の勧告をもとに決められている。その基本的な考え方は、 「放射線はどんなに微量であっても有害である」 というもので、唯一の被爆体験国であることから、「放射能は怖い」と多くの人が思ってきた。実際、ラジウムも多量に摂取すると発ガン性があると指摘する学者もいて、以前は研究者が白眼視される例もあったらしい。
三朝温泉の研究や、長崎・広島の被爆地から一定距離離れた地域でガンの発生率が低いなどの調査がされたこともあって、放射線についての見方はこの三十年の間に大きく変化してきた。なにより、昔から「ラジウム泉」として知られてきた地域では、その効能が長く実感されてきた経緯がある。 現代医学の分野では、そのメカニズムを解明する動きが相次いだ。 最近では、微量の放射能が身体の免疫力を引き出すなどさまざまな機能を亢進する効果が注目を集めている。
いわゆる「ホルミシス効果」だ。 ホルミシスHormesisとは、ギリシャ語のホルモHormo(刺激する、促進する)からきたもので、一九七八年、当時ミズーリ大学のトーマス・ラッキー生化学教授の著書で発表した概念。「生物に対して通常有害な作用を示すものが、微量であれば逆に良い作用を示す生理的刺激作用」をいう。 ラッキー教授は一九八二年、アメリカ保健物理学会誌で、放射線の生体作用についての研究結果を解析し、結論として 「少量の放射線は免疫機能を向上させ、体の活動を活性化し(中略)、老化を抑制して寿命を延ばすなど、いろいろな面で生物学的にみてよいバイオポジティブな効果をもたらす」(みんかつ二〇〇六 前掲の阿岸博士論文より) その時点ではゾウリムシなどの小生物での実験データが多かった。哺乳類での実証研究が不十分とされたが、その後、ホルミシス効果は世界的に脚光を浴び、さまざまな分野で世界中の研究者が新しい発見を続けている。
新潟大学大学院医歯学総合研究科教授・安保徹博士。 日本の免疫学のトップランナーのひとりであり、独自の「安保理論」で日本の医療界に大きな衝撃を与える気骨の学者だ。 ベストセラーになった「免疫革命」(講談社インターナショナル)、「非常識の医学書」(共著・実業之日本社)など多数の著作の他、ラジオなどにも出演。津軽弁まじりのざっくばらんな語り口が人気を集めている。 博士のかつての公式ホームページは次のような文章で始まる。 「平和で豊かな日本に住んでいて、はからずも病気になって思うようにならないで苦しんでいる人が多いのは残念です。このような流れが続くのは、多くの慢性病を原因不明として対症療法を行うレベルの医療でとどまっていることが最大の原因です。 『白血球の自律神経支配』の法則を理解すると病気の成り立ちが見えてきます。病気になるのは生き方に無理があるからなのです。過労や心の悩み、冷え、それに薬の飲み過ぎも危険です。
このように病気の原因に気付くと、病気を治すのは本人が生き方の偏りを正す、ということだと理解できます。病気を治すのは本人が主役になるわけです」 (現在のオフィシャルサイト http://toru-abo.com/) 秋の昼下がり、新潟大学医学部付属大学病院と隣接して立つ建物に、博士を訪ねた。 「私が最近、注目してきたのが、エネルギー生成系です。私たちのエネルギー生成系は、酸素のいらない解糖系と、酸素に依存したミトコンドリア系の二本立てでできています。二十億年前に、私たちの先祖細胞である解糖系細胞とミトコンドリア生命体が合体した名残りで、今でもエネルギーは二つの方法で作られているんです。 しかし、酸素の嫌いな生命体と、酸素が好きな生命体ですから、本体はだんだん酸化して老化していきますね。これは私たちすべてに避けられない現象です。そこで、子孫を絶やさないために、男性は解糖系生命体である精子、女性はミトコンドリア生命体である卵子をつくり、二十億年前の合体をやり直しているわけです。これが受精です。
私たちは子供時代は成長が盛んでやや解糖系よりでエネルギーを作っています。大人になると解糖系とミトコンドリア系が調和を保って生き続けています。しかし、大人の時期にあまり無理を続けると、交感神経緊張によって、血管が萎縮し血流が悪化。低体温と低酸素になります。この条件下で生きるためには、酸素が嫌いな解糖系生命体で生きるしかないわけです。これが発ガンです。 ガン細胞はミトコンドリアの数や機能を抑制し、解糖系で分裂し続ける細胞です。二十億年前に先祖返りして悪条件に適応したのがガンという病気なのです。 こういう理解があると、ガンにならずに生きる方策が見えてくるでしょう。また、なっても、無理な生き方をやめ、体を温めて、深呼吸して、養生するとガンも生きづらくなって消滅するわけです」 「ミトコンドリア系では、酸素を食べ物の中の水素と反応させてエネルギーを作ります。 その際に、クエン酸回路でとりだした、食べ物の水素をプロトンと電子に分ける。ここで放射能が必要なんです。放射能は、宇宙線だったり、カリウム40の放射能だったり、地中にあるラジウム。たとえば、野菜に含まれているカリウムの中にカリウム40という放射能を出す物質が入っていて、ミトコンドリアはそれを使っている。 だから、われわれは野菜を食べないと生きていけないんです。 私がホルミシス効果に最初に気づいたのは、二〇〇五年頃かな。 東北大学の坂本名誉教授が、自分のガンをホルミシスで治しました。元々放射線科の教授です。 ホルミシスの考え方は五十年くらいの歴史があるんです。ただ、日本は被爆国で放射能じたいが危険という考えがあるから、広まらなかった。医学界では、今でも本流ではありません。結局、なんで効くかがよくわからないからですね。
わかったのは、ミトコンドリアが放射能を必ず要求する。放射能というか、電磁波ですね。紫外線も電磁波ですからね。電磁波で一番強いのは、放射能。被爆です。一番波長が短いのがガンマ線、次がエックス線、紫外線、可視光線、赤外線。エネルギーが一番弱いのが電波なわけです。 許容量というか、そこらへんがむずかしい。すごく過敏な人はパソコンのスイッチを入れただけで、気分が悪くなる。 電磁波を四六時中浴びているのは危険です。白血病の原因とも言われているくらいです。だけどまた、ミトコンドリアとかにプラスの面もあるから、なかなかわからないです。たとえば、化学物質過敏症も、みんながなるわけじゃない。過敏な人がなるわけですから。受け手側と刺激側の問題があって、なかなか結論がだせないんです。だから、研究室でも、そういった研究は誰もしていません。難しくてなかなか手が出せないんですね」 「ラジウム温泉も最終的には、個人の感受性が違うから、湯に入る時間などは自分で決めて下さい。実際、三朝温泉ではガンが少ないというデータがあります。 村杉温泉も使い方次第と思うが、あっためただけでもプラスなわけだし、微量放射線があればもっといいんですから。とにかく、難しいこと考えずに体験してみて下さい。あっため療法と免疫回復と両方とも効果があるでしょう。 いっぽうで、一番体を冷すのは抗ガン剤。だから顔色が悪くなります。抗ガン剤やっていい結果が出せないのは、血流が悪くなって生きる力を奪うからです。 結局、ガンじたいは悪い病気ではありません。 ガンは低体温、低酸素に適応するための体の仕組み。二十億年前の先祖返りなんです。 だから、ガンを攻撃することは、わが身を攻撃することと、まったく同じです。初めからガンを攻撃しちゃダメなんです。身体を温めて、深呼吸して、ガン細胞が生まれなくて済む環境にもっていかないと」
村杉の放射能泉については、地質学からも研究が進められてきた。 日本の放射能泉はほとんどが白亜紀(九〇〇〇万年前)の花崗岩地帯にある。地質の上では、日本列島を縦断する糸魚川―静岡構造線によって、東北日本と西南日本に分けられ、放射能線は、西南日本の地質に圧倒的に多い。昔から有名な三朝温泉、有馬温泉、池田温泉など。東北日本では、放射能泉は八つにすぎない。これは、西南日本の花崗岩は堆積岩に起源があってウランやラジウムを含む率が高いのに対し、東北日本の花崗岩はマグマ起源で含有率が低いためとされる。 「ではなぜ、村杉温泉のラドン含有量がこれほど多いのか」 世界的な地質学者として知られる、新潟大学名誉教授・島津光夫博士はかねてから疑問を感じていたという。
そこで、ハンドボーンと呼ばれる専門の測定器を借りて、調査を実施。その結果を二〇〇八年六月、「五頭温泉郷 村杉温泉はどんな温泉か」という小冊子にまとめている。 博士が解明したのは、村杉温泉が世界的に見てもまれな構造を持っている事実だった。 村杉温泉は東北日本に八つしかない放射能泉のひとつ。この一帯は、白亜紀の花崗岩の上に、一五〇〇万年前の中新世紀中期に海底で泥岩が堆積。そのまま日本アルプスが隆起した約五十万年前の第四紀に最も激しく隆起した。この頃は氷河時代の間氷期で、気温が上昇し、雨量も増えて、花崗岩の風化が進んだ。山地の地表で風化した花崗岩は粉状になって大雨の時に崩壊。何度も土石流となって山麓を覆うことになる。 島津博士によると、花崗岩の岩盤に断層などの割れ目が多かったり、風化が進んで岩石がもろくなると、そこを通過する地下水と岩石が接触する面積が増して、放射性元素を溶かし込む率が高くなるという。 村杉付近には新発田―小出構造線という断層帯が走っていて、東西にふたつある断層のうち、東側の断層に湯脈のもとがあるらしい。堆積岩に起源があり、断層が走る村杉では、こうしたわけで「ラジウム泉」が生まれた。 「薬師乃湯」の三号井は、もともと泥岩にふさがれて、温泉とは気づかれなかった。 二〇〇一年に発見された時は、ふさいでいた泥岩が除かれて、一気に暴噴。毎分五六〇リットルも自噴し、その影響から一号井と二号井の湯量が減少したという。これは、三つの井戸が同じ湯脈から発生していることを示している。
この湯脈の他、村を流れる伏流水からもラドンが検出されている。 村の中心部の砂礫層は、三万~一・八万年前に発生した村杉土石流の堆積物。この砂礫層の中を流れる伏流水に、湯脈からラドンを含む水が混じったため、放射能が高く、旅館の井戸水から二十マッヘを超すラドンが検出されている例もある。温泉に入るだけでなく、井戸から汲んだ伏流水を飲んだり、庭を散歩するだけで伏流水から立ち上るラドンを吸い込むことができるわけだ。 湯脈と伏流水が組み合わさった複合型放射能泉。これが「村杉の秘密」だった。 「日本の放射能温泉のでき方、地質との関係はあまり報告されていません。ラドンの出方がわかった村杉温泉のような例は多くありません。そして、湯脈と伏流水の組み合わさった複合型放射能泉は日本でも珍しい温泉です」(「五頭温泉郷 村杉温泉はどんな温泉か」より)
この特殊性から、奇跡とも称されるラドン含有量と、効能が生まれた。 「一号井のところにある賽銭箱に入れた投げ銭は、しばらく放置しておくと、十円玉に五円玉のような穴が開いたり、一円玉が溶けてしまうほどの威力です」(川上博治さん) それほどのパワーだから、温泉を利用するには際には、ちょっとしたコツがいる。 外国では放射能泉は、主として入浴、飲用、吸入の三つの方法を使用。特にアルプス山脈に囲まれたオーストリアのバード・ガスタインは、旧炭鉱を利用したラドンガス吸入療法で広く知られている。ここでは、坑道の入り口にある病院で診察を受けた後、電車で約二〇〇〇メートルの坑道を通って、治療室に運ばれる。一度に百人ほど、一日に二回の運行。治療室は五室あって、比較的高めに温度・湿度が調節されている。患者は治療室では裸でベッドに横たわり、吸入と皮膚を通じてラドンを取り入れる仕掛だ。時間にして約一時間。この間、医師と看護士が二回、診察してまわる。これを隔日で三週間、計十~十五回繰り返す。 ドイツのバード・クロイツナッハの、洞窟療法もユニークだ。文字通り、洞窟で治療を受ける。ガスタインよりも温度、湿度とも低く設定されているため、着衣で治療を受けることができるのが特徴だ。
日本の場合は、入浴が中心だったが、前出の堀内教授らにより、吸入の大切さが説かれてきた。ラドンは気体のため、湯の中に溶けているより、空中に飛散するほうが多いからだ。 飲用では消化器から入るが、吸入では肺から吸収されて血液循環に入り、全身にラドンが行き渡る。このため、全身に対する利用は、飲用よりも吸入のほうが効率がよいという。ラドン粒子は空気より重いため、浴水面付近に漂っている割合が多い。バード・ガスタインの通称・ガスタイン式浴槽は、縁を極端に高くし、入浴しながら吸入しやすい工夫をしている。 ただし。 「数多ある泉質の中で放射能泉は湯あたりを起こしやすい、即ち刺激効果があるから使い方に注意しなければならない。また医療効果を求めるにはある程度の強さ(濃度)が必要とされ、どのくらいの濃度の温泉をどのような形で使ったらよいか検討されなければならない。温泉療法は一廻り、平均十五~二十回で終了し、繰り返す必要がある時には半年くらい経ってから次のクールを行うのがよい」(「放射能泉について」大妻女子大学・堀内公子教授) とある。
温泉療法は、人間が持つ、もともとの治癒力や抵抗力を引き出して体を治すことを目的とする。ひとりひとりの顔が違うように、どの程度の量が適当なのかは、個人差もあり、一概には言えないところだ。ただ、安保教授が述べているとおり、「難しいこと考えずに行ってみなさい」というのが正解なのかもしれない。体調をみながら楽しく温泉に浸る。免疫力の活性化によって生きるエネルギーが増加すれば、体の内側から、美肌や老化防止などさまざまな効果が得られるはずだ。 ストレスも、快適も、過ぎてはいけない。 体調を見ながら、「ほどほどに」という点では、酒と似ているかしれない。
出典:開湯700年へ 越後村杉ラジウム温泉 奇跡の「温泉力」より